ぼそぼそ声が止まる
老人の目が宙に浮く
何かを探るようだったが
諦めたように半開きの口を閉じる
老人が語る相手は
地下水脈に迷い込んだいつかの子どもたち
耳を欹てる地下酒場の客は
自分もその一人に違いないと悟る
老人はその姿でいるのに疲れたように
よろよろ席を立つ
引きづるように階段を上がる
初めて食べた九頭竜のアユの味を思い出していた
川に降りた老人は
すっと消えた
九頭竜
九頭竜川の上流は豪雪を蓄えて
春
一斉に襲い掛かる濁流になる
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