<記憶の断片> 鎌池

 


 


鎌池に沈む少年は

生きているかのように美しく

目を見開いていた

視線の先は彼方の記憶を留める

光に満ちた世界だろうか

 

 

少年の水死水難事故の話は

直ぐに広まって直ぐに収まった

弔いのために山奥に入った僧侶は

そのまま帰ってこなかったが

探しに行こうと言う人はいない

少年のことはタブーになった

鏡池に近づくこともしない

 

鎌池は、温泉客、観光客、風景写真家、昔も今も、来る人は限られている

ときどき道を間違える人が出て騒ぎになる 


村人の誰も見ていないのに

少年の声は 全員の耳に残っていた

 

子ども連れの観光客が来ると

耳を澄ますようになった

 

 

 

PV

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