山の神
最初は山歩きをしていた人が
奥まった場所で道に迷って
目印に石を重ねただけだった
あちこちに小さな目印
夜になると役に立たない
丁度、奥深い山の中央、登りと下りが交差する場所がある
ここを間違えると帰れなくなる
まるで、この世とあの世の境界のようだった
誰かが帰れなくなった魂を弔うように
小さな祠を作った
みすぼらしくても
道に迷ったものには光り輝く
誰もが手を合わせるようになった
誰となく山の神というようになった
山は高さより深さが怖い
平坦に見えて安心して深く入ると帰れなくなる
親子連れは平坦さに油断する
小さな祠に子どもの名前が書かれるようになった
古くかすれてしまった名前の上に新しい名前が書きこまれる
信州の山は今も高く美しい
登山を楽しむ者たちの事故があるとニュースで話題になる
高山を取り囲む森や林の奥深い迷路
ニュースにもならない
信州の森には小さな祠、小さな地蔵があちこちにある
一つ一つが子供を守ろうとしている
醜い大人たちが森を破壊し、祠も地蔵も重機で歯化するまでは
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