<記憶の断片>
深海魚のメギス。正しくはニギス(似鱚)。白身魚で形も味もがキスに似ているのでメギス。北陸の特産と言ってもいい。目が大きいので目ギスとか。
不思議なことに、このポピュラーとも言えない奇妙な魚が信州に運ばれてくる。寒さが抜けきらない春先。新鮮なメギスが当然のように、まるで里帰りをするかのように、信州の山奥に運ばれてくる。
ローカルスーパーの鮮魚売り場。メギスとホタルイカが隣合わせに並ぶ。微妙な空気感に気付く人は少ない。多くの人には、無感心なエリア。
しかし、一部の人は争うように数パック纏めて買う。取り付かれたような表情の老人たちだ。老人たちは、自分が今いる場所も時代もはっきりしない。子どもだったころを思い出そうとしていることだけは分かる。
今年も塩の道を伝って旬のメギスが運ばれてきた。
海の底でメギスが見たもの
大きな目に涙が浮かんでいたのは悲しい話だったに違いない
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